キャラクター考_主人公校とライバル校に関する観測
ふと、思ったのだけども、無印『テニスの王子様』で明確な団体戦の勝ち試合描写が無い学校は【聖ルドルフ・六角・緑山】の3つだけではないだろうか。
主人公校の青学以外のいわゆるライバル校の中でも【不動峰・聖ルドルフ・山吹・氷帝・緑山・六角・立海・比嘉・四天宝寺】のベストゲームスシリーズOP映像に出てくる9校中のカウントではあるが、他の6校はどこかに明確に団体戦に勝つ試合の描写があるかと思われる。
名古屋星徳をこの中に混ぜるか悩みどころだがレギュラー選手全員分の名前が作中に出てないので除外。
氷帝は微妙だけど都大会コンソレーション勝上りに裕太vs慈郎の試合描写が回想数コマだけどあるので勝ち描写に含めるとする。
その上で、セリフやトーナメント表だけでしか勝ちを確認できないのは【聖ルドルフ・六角・緑山】3校だけではないだろうか。
全校青学に敗北しているのは自明だが、勝利校は以下の通り。
山吹→不動峰(都)
緑山
六角
比嘉→六角(全国)
また学校単位での観測対象として主人公校の青学を除いたら上述9校を抽出するのにベストゲームスシリーズのOP映像登場校を選んだ理由として、ベストゲームスシリーズの監督川口敬一郎氏の言葉を参考にしている。(『THE PRINCE OF TENNIS BEST GAMES‼︎ 手塚vs跡部』封入特典ブックレットSTAFF INTERVIEWなど)
聖ルドルフは青学の身内がいる。
緑山はコーチ枠で南次郎とつながりがある。
テニスの枠外で青学身内枠。つまり、読もうとすると明確な勝ち描写の無い【聖ルドルフ・六角・緑山】この3校は青学身内枠なのではないだろうか。
すなわち、勝利の爽快感や救済は青学が身代わりできる存在として判断されたのでは。
また、私は、ライバル校の中でも不動峰と六角は主人公サイドだと読んでいて、でもこの2校の立場は明確に異なっていて、不動峰は好敵手で六角は身内っぽい。と思っていたら20.5巻に原作者の的確な表現があった。「不動峰は仲間、六角は兄貴分」(P239)
不動峰と六角は、従来の少年漫画では主人公サイドが経験するであろう敗北イベント、無印『テニスの王子様』での青学が経験するであろう敗北を肩代わりして経験した2校と読むことができるのではないか。
いずれにせよ無印『テニスの王子様』は無我の境地や天衣無縫の極みの扉を開くきっかけが無意識の体の記憶であるため、越前リョーマが過去に対戦したり観戦したりした選手すべてが最終奥義に繋がるので主人公による身代わりの擬似勝利はラスボスの幸村精市を除く全ての登場人物につながっているのであるが。
注釈として幸村精市の救済については、越前リョーマとの直接対決という形で昇華されていると読んでいる。(この件の思考については過去の記事にて仔細に述べている。例:https://namimashimashi-tpot-373.hatenablog.jp/entry/2020/01/16/202318 、 https://namimashimashi-tpot-373.hatenablog.jp/entry/2019/01/05/032649 )
私はテニスの王子様の「一度試合に勝ったからと言ってそれで強い弱いが決まる訳ではない」価値観が好きだ。
2018年3月2日許斐剛のパーフェクトLINE LIVE!で許斐剛が話した言葉である。
他にも、テニスの王子様20周年アニバーサリーブックTENIPURI PARTY テニプリパーティー 一問一答ラリー内Q9「日吉くんと鳳くんはシングルスで戦うとどちらが強いですか?」A.「鳳くんのサーブの調子によって勝敗が変わります。」(P166)と記載されている。
実はこの法則は全団体試合全勝の主人公校青学ではなく"青学の仲間のような一緒に伸びていく"(テニスの王子様 公式ファンブック 20.5 P239)不動峰によって作中で提示されている。
無印『テニスの王子様』ではその通りに、不動峰vs山吹は2回対戦があり勝敗が変わるのである。オーダーの組み方やその時の選手の調子によって変わるものである。
『新テニスの王子様』まで含めると手塚国光vs跡部景吾は無印と新とで勝敗が変わっている。シングルスとダブルスなど違いはあれど。
何が言いたいのか、みたいなところであるが、
・ライバル校と一口にまとめても主人公からの立ち位置に違いがあるように設計されている
・近しい存在の勝利がもたらすカタルシス
・勝利の刹那性と強くなれる可能性の提示
この辺りを表現しているのは試合外での青学身内ライバル校の存在も大きいのではないか、という話だ。
勝利描写はないが、聖ルドルフ・六角・緑山がテニスの王子様のストーリーの中で担う役割は大きいだろう。
でないとやってられない、という個人的な願望もこめつつ、今回は一旦筆を置く。