『新テニスの王子様 氷帝vs立海 Game of Future前篇』原作偏差値高過ぎリスト
2021年2月13日(土)に公開された『新テニスの王子様 氷帝vs立海 Game of Future前篇』。
アニメオリジナルストーリーでありながら新テニスの王子様の原作者 許斐剛マッチメイク完全監修の一作である。
視聴して驚いた。
あまりに原作の『テニスの王子様』『新テニスの王子様』そのものに近すぎる。
まるで原作漫画を見ているかのようなシーン、キャラクターの躍動、セリフの数々に感動してしまった。
原作者完全監修は伊達じゃないと思い知った。
それでありながら、これはアニメ表現でなければ出来ないだろう、と思わせるような見せ方をした箇所もあり、テニスの王子様シリーズのアニメ視聴経験の中でもトップクラスに面白かった。
ここは良かったと思わされた箇所を記したくなったので、ブログにまとめることにしました。
〜以下、内容伏せは一切無く記載していきます〜
《全体》
まず、Game of Futureと次世代をテーマにしたことが上手い。
氷帝vs立海の試合を組む時にチーム総合力ではどうしても立海が勝ってしまう。
現に2013年9月9日発行 公式ファンブック 新テニスの王子様10.5に掲載されているPlayers' Database内、合宿招集メンバー各校8名の総合評価チャート平均値を採ると、氷帝17.2、立海18.2(どちらも小数点2位以下四捨五入)となる。
総合値にして1程度の開きが出る。
しかし、そんな中でも、氷帝に軍配が上がるとしたら次世代の2年生の数だろう。
立海の切原赤也の能力は非常に高いが、テニスの王子様が取り扱うのは団体戦だ。
氷帝には全国を知っている2年生が3人いる。しかも3人だ3人とも全国で試合をしている。この経験を持っているのが1人と3人とでは全然違う。
立海が次世代でも勝つためにはここに手を入れなくてはならない。
でも戦力を落とし過ぎる訳にはいかない。
見込みのある2年生を1人だけダブルス枠で、しかも相方をW杯選抜に選ばれたプレイヤーと組ませて出場させるのが落とし所だ。
そこで、新キャラクター玉川よしおの出番である。
しかも、この玉川よしおに未完の必殺技がある設定にすることで彼がその1人だけ起用される見込みのある2年生であることに説得力を持たせる。
玉川よしおの設定については、様々な媒体で少しずつ公開されているが、原作者許斐剛のTwitterで2020年11月4日付けで公開された動画の設定を最新とする。(2020年3月20日付け)
#玉川よしお設定集#ヨシオタマガワ#新テニスの王子様氷帝vs立海#ヨルテケヅツヲスニテハウオニ pic.twitter.com/71C5QNHOWw
— 許斐剛 (@konomi_takeshi) 2020年11月4日
次世代を担う新しいキャラクターを登場させてメインテーマを担わせることで、新しい物語にしつつも、話に無理がなく見せている。
話を次世代に向けるために新しい次世代のキャラクターを登場させる手法は、『テニスの王子様』の最終決戦でも浦山しい太の登場で取り入れていた手法である。(Genius373最終決戦!王子様vs神の子③)
《D2 向日岳人・忍足侑士ペアvs丸井ブン太・玉川よしおペア》
多くの視聴者がTwitter等で書いていることだが、忍足・向日ペアの"3人でダブルス"へのリベンジ・マッチになっている。
関東大会 青学vs氷帝D2で3人でダブルスを相手にする忍足・向日ペア。しかも3年生の固定最強ペア+2年生1人の組み合わせと、関東大会初戦の青学D2にそっくりの組み合わせだ。
全国大会初戦のvs椿川では勝利のあるペアではあるが、原作者監修下で勝ち試合が描かれたのも悲願である。
忍足・向日ペアの勝利描写が原作者許斐剛先生のこだわりでもあったことは、2021年4月7日に『新テニスの王子様 氷帝vs立海 Game of Future』Webサイトで公開されたスペシャル座談会第2弾vol.1にて明かされている。
スペシャル座談会 第2弾 | 新テニスの王子様 氷帝vs立海 Game of Future 特設サイト
この試合は、尺が短くて正直文量も少なくなってしまうが。
試合後に鳳長太郎に問われる 「満足できたか」のやり取りは、関東大会でも全国大会でも監督の榊太郎と宍戸・鳳ペアが交わすやり取りである。
関東大会でも全国大会でも監督に答えるのは3年生の宍戸であったが、この氷帝vs立海は次世代である2年生の鳳がこの「満足できたか」の問いかけに答える。
これぞ"Game of Future"だ。
とはいえ、この試合。欲を言えば、真田弦一郎と柳蓮二にもう少し原作の最新展開を拾う方向が欲しかった、と思ったりもする。
《S3 宍戸亮vs柳生比呂士》
試合に勝ったのは宍戸亮、新技で新しい展開を見せたのが柳生比呂士、と魅せ場を分けてどちらにも華を持たせた巧いストーリーの一戦。
新技の展開を見せる役割となった柳生からは新テニスの王子様30巻Golden age295「仁王くん アナタは今… 世界を震撼させていますよ」と体を震わせながら言った柳生比呂士を覚えた。仁王に震撼した柳生の未来だ。
柳生比呂士の新技「リフレクションレーザー」は、レーザービームと同じ速度で別方向に跳ねるショットだと思い込ませることで威力を発揮する。
これは、新テニスの王子様1巻Golden age7苛酷な試練を乗り越えろ にて仁王雅治vs柳生比呂士で柳生が最後に見せた曲がるレーザービームで「紳士(ジェントルマン)が詐欺師(ペテンし)を詐欺(ペテン)に掛けちまったぜ」と言われる。
跳ねる角度打った本人以外はどこに跳ねるか分からない切原赤也のナックルサーブのオマージュっぽさもある。
テニスの王子様公式ファンブック40.5巻P79柳生比呂士のページで豆トリビアを披露する担当が切原赤也であり、「「レーザービーム」って名前からも分かる様に、意外と特撮とかSFとかに萌える人なんスよね〜」と柳生比呂士の絶対的必殺技レーザービームを語らせたことを思い起こさせる。
また、宍戸&鳳の向き合っての拳合わせカットは、テニスの王子様15巻Genius131信頼の最終コマでその時に宍戸鳳ペアが試合をしていた相手である乾貞治・海堂薫ペアをモチーフにしているであろう。乾が左手、海堂が右手の正面を向いての拳合わせ。
この拳合わせ絵はBEST GAMES!!シリーズでは原作コマ通りには描かれておらず、新テニアニメチームが原作漫画に加えてBEST GAMES!!を踏まえながらGame of Futureを制作したことが伺えた。
以上、
原作『テニスの王子様』のオマージュのようなシーン、カットの数々に感動した箇所である。
願う事ならばこの『新テニスの王子様 氷帝vs立海 Game of Future』は、許斐剛マッチメイク完全監修なので、是非許斐剛漫画で読んでもみたいものである。
漫画になる際に、とりわけ玉川よしおを漫画でどのように表現するかは非常に気になる。
玉川よしおは、アニメが初めての試合であり、かつ、このGame of Futureのエピソードのために登場したと言っても過言ではないだろうキャラクターに相応しく、アニメだからこそできる見せ方をされている。
丸井からの呼びかけに対する「はい 玉川です」。
この定型やりとりを繰り返す。
これを、その時々の戦況や玉川の心境を抑揚や感情の込め方で違いを出して表現している。
視覚情報しか無い漫画では表現できないキャラクターの見せ方だ。
原作者監修で制作したアニメで初めての見せ場を作るキャラクターである矜持、その利点を最大限に活かしてきた描かれ方と言えるだろう。
彼が許斐剛漫画になった時にどの様に描かれるのか非常に興味がある。
《EDテーマ『ONE and ONLY/氷帝エタニティと立海ヤング漢』》
これは『テニスの王子様』ではなく『新テニスの王子様』なのだ。
ONE and ONLY 氷帝エタニティと立海ヤング漢 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索
サビの歌詞
「どうだい?甘い甘い 夢から醒めた世界
お前はこれで満足かい?
まだ 脆い脆い ガキみたいな正論
強さも優しさも1つじゃない
全てを奪うんだ ONE and ONLYであれ
どうだい?甘い甘い 夢から醒めた世界
やるべきことは、ほらなんだ?
もっと高く高くほとばしれ情熱
弱さも厳しさも1つじゃない
その目で見極めろ ONE and ONLYであれ
世界を変えちまえ ONE and ONLYであれ」
「テニスって楽しいじゃん」と、皆が戦ってきた一つの答えにたどり着く『テニスの王子様』は、少年漫画の終決として非常に美しい。
だが、その続きの『新テニスの王子様』は各人が自分の武器を探して見つけて成長していく構成が取られている。
強さも 優しさも 弱さも 厳しさも一つじゃないのが、『新テニスの王子様』だ。
新テニスの王子様パーフェクトファンブック23.5の「許斐先生が語る!パーフェクトインタビュー」内で「『新テニ』で、特に進化したと感じる中学生キャラは?」の質問に対して「(前略)これまでのテニプリだったら、すぐに上手くいくんですよ。何かをやろう、よし、練習したからできた!っていうのが『テニプリ』。それまでのプロセスをうじうじ書かないのが漫画のコンセプトでもあったんです。でも今回に関しては、そんな簡単には強くなれないよと。時間を掛けた文いい演出を考えているので(後略)」と、『新テニスの王子様』と『テニスの王子様』との描き方の違いを語っている。
""テニスの王子様ではなく、"新"テニスの王子様を冠にした『新テニスの王子様 氷帝vs立海』。
2021年4月17日に公開される後篇ではどんな『新テニスの王子様』を見せてくれるのか。恐くもあり、期待もあり、その時を待とう。