3.文化現象(礼拝)
ファンが一堂に会してテニスの王子様というコンテンツを堪能するテニプリフェスタを始めとした公式イベントがこれに値するだろう。ミュージカルテニスの王子様(テニミュ)はDream Liveは礼拝的存在になるが、本公演自体はテニスの王子様のコンテンツの一つであり、読者(ファン/消費者)が作品世界観と対話する対象と考えられる。
公式イベントでは、アニメおよびミュージカルのキャストが舞台で披露するパフォーマンスを通して、ファンは主体的にテニスの王子様の世界観を楽しむと共に、キャラクターソングやミュージカル楽曲が持つ原作漫画のメッセージを直接体感して受け取り、時には原作者:許斐剛先生直々の言葉を聞くことができる。
アニメ声優やミュージカル俳優といった原作者以外の公式コンテンツを担う人々=テニプリファミリーは、既存宗教でいうところの伝道師(キリスト教での牧師、仏教での僧侶など)の役割を果たす。
「テニプリっていいな」は祈りの言葉であり、キリスト教でいうところの「Amen」や仏教の「南無阿弥陀」に似た性質をもつ。
キャラクターソングやミュージカルの楽曲は、読者に対して、原作のストーリーを補完したり、新たな解釈を提供したり、王子様のキャラクターに幅や深みをもたらしたりする。
なお、アニメ テニスの王子様 及び 新テニスの王子様名義のキャラクターソングは2016年10月時点で750曲以上リリースされている。(一説によると、アニメ業界において、昨今のアニメにおいて、キャラクターがアニメ放映後にキャラクター名義で楽曲をリリースする、という流れはテニスの王子様が広めた、とも言われているらしい。)
ミュージカル楽曲も加えるとテニスの王子様名義の楽曲数は1,000曲を超えるとも言われており、歌という人間に親しみやすい文化が広く親しまれていることも、テニスの王子様というコンテンツにおいて宗教文化現象を生じさせる一因だと考えられる。
原作世界観のメッセージを作者から聞き、同じようにその世界を愛する人と空間・体験を共有し、さらには自ら歌い、踊り、感謝の言葉を述べることができる機会が定期的に公式と原作者から提供されていることは、テニスの王子様ファン特有の文化を醸造することに繋がっているのではないだろうか。