超解釈テニスの王子様  人生哲学としてのテニプリ(namimashimashiのブログ)

人生への圧倒的肯定を描き出す『テニスの王子様』と、その続編『新テニスの王子様』についての個人的な考察を綴ります。 出版社および原作者など全ての公式とは一切の関係はありません。全ては一読者の勝手で個人的な趣味嗜好です。 Twitterアカウント:@namimashimashi

多様性の可能性

漫画、アニメ、ミュージカルの公式3コンテンツのいずれもその作品が発するエネルギーによって"人生への圧倒的肯定感"を受け手に授ける『テニスの王子様』だが、これは、キャラクターの圧倒的多様性が可能にした現象だと思われる。

いわゆる「ダイバーシティ経営」と同じことがテニプリには生じている。

つまり、『テニスの王子様』『新テニスの王子様』は、原作者である許斐剛先生が一から隅々まで全てを想定し、緻密な計算のうえに描かれた漫画ではなく、まるで1人の現実の人間のようなリアリティーを感じさせるレベルまで細部まで作り込まれたキャラクター達を圧倒的大人数で登場、躍動させることで、決して1人の人間が想定するだけでは到達できない思想やパワーを持つことができるようになっている状態である。

テニプリには約200人のリアルな設定を持つキャラクターが描かれており、それは、200人の多様な人々で、しかもその1人1人が中心人物の"大切な考え"を共有し活躍できる状態、企業(団体)を経営し、動かしている状態に非常に似ている。

テニプリキャラクターの"リアルさ"は、細部まで作り込まれたキャラクター設定(身長、体重、血液型、足の大きさ、家族構成の他、通学鞄の中身、自宅の部屋レイアウト、おこづかいの使い途など)と、声優とミュージカルキャストという現実の人間がキャラクターを演じ担い続けることで、かなり高度な現実味を帯びている。特にミュージカルキャストは、テニミュが『テニスの王子様』1〜42巻の内容をシーズンの括りにして何度も繰り返し公演し、その度にリアリティのある年代の演者を再キャスティングしていることから、常に全てのキャラクターに生身の人間の現実味やエネルギーを注ぎ続ける役割を果たしているだろう。

原作者許斐先生が作り出しているという点において、全てのキャラクターは許斐先生が大切にしている思想を共有しているが、その一方で、原作者も想定していない動きをする程に人格や主張を有している。事実、許斐先生はラジオ番組で「試合を書き始めた時に想定していた試合結果とは違う勝敗になった試合がいくつかある。それぞれのキャラクターの考えを拾い、動かしていく内に、最初の自分の想定とは違った動きをしていた。それが試合結果を動かした。」と語ったこともある程だ。

根幹の"想い"を共有した多様な人々が一つの物を作り上げることで、1人の人間では到底到達できない領域への到達が可能になる。それが、テニプリを、読者に"人生への圧倒的肯定感"というメッセージを受け取らせ、日々の人生の糧となり、王子様達を支えとして歩む生き方を提供する程に影響力のあるコンテンツと成らしめている一つの要因であるだろう。